ヌイトメルの素材選び (2014)

2014-4-21

2014年4月現在、ヌイトメルで主に使っている素材を紹介します。

鹿革

ヌイトメルで使う主要な革は、
ニュージーランド産アカシカ(Red deer)の原皮※ が国内(奈良県)でなめされた、国産タンニン鞣(なめ)し革です。

※原皮(げんぴ:革を鞣す前段階の皮のこと。動物の皮膚が腐らないように塩漬けされたもの。)

赤鹿は北米やヨーロッパなどに生息していましたが、ニュージーランドにはハンティングゲーム目的で持ち込まれました。
その後ニュージーランドでは天敵がおらず増えすぎて害獣となっていた赤鹿は、大量駆除の対象となってしまいました。
ヘリコプターで空から駆除という、コストも手間もかかっていた時代もありましたが、
後に輸出品として価値が見直されたそうです。
鹿肉は高蛋白低カロリーなヘルシー食材として主にヨーロッパで人気があり、
現在は捕獲飼育された食用アカシカの副産物として、皮も輸出されています。
ニュージーランドの広大な土地でストレスなく飼育された赤鹿は、
肉質も皮質も良く、高級品として人気が高いそうです。

鞣す:皮を防腐処理して革にすること。
詳しくはこちらから → 

  

動物ですから、一頭一頭で大きさや栄養状態、皮膚の質が違いますし、季節、寒暖差によって皮膚の質や薄さも違います。
もちろん虫刺されや怪我もしますし、
ほかの動物よりもキズが多いのは、ツノがあるため傷つけあうことがあるからです。
輸入される塩漬けにされた皮の保存状態によっても原皮の質が違ってきます。
タンニン鞣しの素上げ、染料染めという技法は原料の質がかなりおおきな割合で仕上がりに影響しますから、
鹿個体の皮膚の質が最も重要といっても過言ではないでしょう。

ヌイトメルでは肉厚の鹿革を中心として、
型によって革の厚さにも適正がありますから、革質を重視しながらさらに数種類の厚さに揃え、
染料で染められものを使っています。
タンニン鞣しと染料染めは、革の自然な風合いがそのまま表れます。
さらにしっとりした風合いにするため、なめしの工程で油分を多めに加えてあります。
鹿革は水分や油分を吸いやすいため、シミになりやすい※ という特徴がありますが、
あらかじめ油分を多くすることでより水に強い、水に濡れてもシミが残りにくい革になります。

※ 油分や水によるシミは、使い込んで革が馴染んでくると全体的に色つやが
変化して次第に目立たなくなってきます。 薄色の革は汚れやシミが目立ち
やすいため、そのシミが重なっていくような経年変化になります。

>> シミができた場合は? → 鹿革のお手入れ

風合いは季節や個体差、ロットで微妙に異なりますが、
できるだけ最良な仕上がりを想定して時期も見極めながら、幾度もタンナーと打ち合わせを重ねています。
常に完璧はあり得ないのですが、そこにヌメ(タンニン鞣し)革の魅力があるのだと思います。

素上げのヌメ鹿革の風合いを一番楽しめるのは、染色されていない”すっぴん”の白ヌメ革です。
白ヌメ革独特の色 : タンニンで鞣す段階でついた、ほのかなベージュ色 : からの、
色ツヤなど径年変化が際立ちます。
白ヌメ鹿革と、白ヌメ鹿革に草木染料で刷毛染めを施した革は、工房内で加工をしています。
定番の染料染めとは一味違ったオリジナルの鹿革です。

 

>> 詳しくはこちら → 白ヌメ鹿革のはなし
→ 草木染めの鹿革のはなし

※ 白ヌメの鹿革は、使用状況によってはたいへん汚れやすくなっております。
薄い色のヌメ革は、汚れを完全に落とすことはできませんが、使用していくうちに経年変化をして、
汚れやシミもなじんでいくものとご理解いただいたうえで、ご使用いただきたく存じます。
汚れが気になるというかたは、濃色のものをお選びいただくことをお勧めいたします。

>> 鹿革については、こちらでも要約して紹介しています。 → 鹿革・ヌイトメルで使用しているもの

牛革

鹿革や布の柔らかさを活かしながら、硬さや張りが必要な部分には牛革を部分的に使います。
タンニン鞣しの牛革は線維が硬く締まっていますので、
ショルダーや持ち手、穴などの補強、底の補強と保形に適しています。
また、牛革は1枚の面が大きいので、紐やショルダーなど長いパーツを取るのにも最適です。

ショルダーや穴の補強など硬さが必要な部分には硬く厚い牛革、
ロープなど柔らかさが必要な部分には揉み加工で柔らかくした薄めの牛革、
しっかりとした厚さに加え、布とのコンビネーションで柔らかさが欲しいものには揉み加工された極厚牛革、というように、

栃木や東京、姫路など、国内のヌメ(タンニン鞣し)革を得意とされているタンナーの牛革を数種類、
用途に応じて使い分けています。

   

>> 牛革については、こちらでも紹介しています。 → 牛革・ヌイトメルで使用しているもの

杞柳布

革だけでは重くなりがちな大きめのバッグは、布とコンビネーションで作ると雰囲気も重量も軽くなります。
但馬ちりめんと杞柳細工の産地、兵庫県豊岡市で作られたオリジナル帆布「杞柳布」。
豊岡特産の杞柳細工に使われる杞柳(コリヤナギ)の皮や出石の蕎麦がらなどの草木で染めた、
ロウシルク×コットンの肉厚ながらやわらかい帆布です。
鹿革との相性が良いその風合いは、糸に撚り込まれた杞柳の皮、繭のカス、糸の節などが素朴感を演出しながらも、
シルクの光沢と草木染めの色合いが上品な雰囲気を醸し出しています。

  

>>詳しくはこちら →  杞柳布のはなし
染色のはなし

草木染めの原料:杞柳のはなし

麻(リネン)

バッグの表布には、リトアニア産のリネンを部分使いしています。
原料の亜麻も自国で栽培されているリトアニアのリネンは厚みも強度もあり、柄や素朴な風合いが独特で、バッグのほど良いアクセントになります。
ほかに、地元(滋賀県)産のリネンも一部使います。

 

  

裏地にはしっかり織目の詰まった国産のリネンを使用しています。
裏地用のリネンには、裏面に薄くコート加工を施しており、強度アップと程よい張り感の効果があります。
「結ぶトートバッグ」にはリトアニアの薄いリネン裏地を使用していますので、ひも部分は布のように結ぶことができます。

>> 詳しくはこちら →  リトアニアリネンのはなし
滋賀の麻のはなし

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素材のことは、こちらからも紹介しています。 → ヌイトメルにまつわるイロイロなものがたり ・・ 「素材のこと

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Nordic Garden 企画展のこと。

2014-5-26

梅田ブリーゼブリーゼ4F Nordic Gardenさんで、昨日(5/25)まで期間限定で店内にコーナーを作っていただいていました。

ノルディックガーデンさんは、北欧ヴィンテージ食器や雑貨、織物、刺繍、白樺細工などの
北欧の手仕事アイテムを中心に取り扱われているギャラリーショップです。

   

今は期間限定でヨーロッパのブロカントも。
シルバーのカトラリーや本、スタンプ、キャニスター。蚤の市ってワクワクします。

 

店内では今回のような企画展のほか、
デンマーク刺繍のキットや図案集、本、刺繍用・色とりどりの花糸(綿糸)も販売されており、
ヤマナシヘムスロイドの大阪校として、織物や刺繍の北欧の家庭手工芸教室も開催されています。

織物、編み物、花刺繍、白刺繍、
フランス額窓やカリグラフィ ・・・
開催されているのは「オトナ」の教室です。
こういうのが趣味なのって、素敵ですよね~
ほかにも色々とされているそうで、どれも楽しそう。

土曜日はちょうど刺繍教室が開かれていました。
リネンの布に綿糸でクロスステッチ。その刺繍の繊細なこと。

 

生徒のかたがお土産に持ってきてくださっていたコメツツジが、可憐でとってもかわいらしかったです。
今はちょうどツツジの季節ですね。

 
 
 
6月22日、こちらでワークショップをする予定です。
詳細は6月はじめごろにお知らせいたします。
 
 
サンケイビルの33階に上ってみました。久しぶりの都会の景色。
足がすくみました・・・

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柿渋染めのバッグ

2014-5-29

柿渋染めの紹介です。
素上げの白い鹿革に、柿渋染料で染めていきます。
刷毛の動かす方向で模様の出かたが違うので、毎回緊張しながら刷毛を動かしています。

色の入り方を見て色の濃さを調整しながら染料で染めた後に、
媒染め(色止め)をして、洗って乾かして、さらに油分を足してから干して。
硬くなった部分は揉んで柔らかくします。

カフェオレ色の柿渋染めシリーズです。

ブナ足の巾着バッグと巾着トートのLサイズ。

 

ブロックパッチワークトートとポーチ。ポーチはログウッド染め(画像奥)も。

 

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「人と鹿の共生」シンポジウムのこと

2014-5-13

「ヌイトメルで使用している革は、奈良県でなめされています。」

と言うと、ほとんどの方は「あぁ、鹿で有名な奈良なんですね、」という印象を受けられるのではないでしょうか。
会話ではその後に、「その原料になる原皮はニュージーランド産なんです、」という補足をすることが少なくありません。
ややこしいのですが、「鞣し(なめし)」の工程からが「革」というので、国産革で原皮の産地まではお伝えする必要はないのです。
でも、そのままにしていると“奈良の鹿をなめした革”という誤解が生じてしまうように思い、どうしても付け足してしまいます。

革は副産物なので、鹿肉を食べる習慣のない日本では原皮を調達できないということは簡単に想像できるのですが、そこかしこで獣害、とりわけ鹿による農作物や森林の被害を聞くにつけ、年間数十万頭も駆除、廃棄されている鹿を自然資源として利用することができないのかと、自然と考えは膨らんでしまうのです。
自分たちが使う鹿革の魅力をわかりやすく伝えるためにと、色々な文献を調べているうちに、もっと奥にまでその興味は広がっていきます。革の歴史、人間の営みと常に関わってきたその歴史は、布と同様に成り立ちから人間と共に発展してきたのですから。
 
 
現在、国産革に使われている原料のほとんどは、外国産の原皮から鞣されています。
ただ豚革だけは原皮もほぼ全てが国産なのは、豚の皮は産業になるほどの需要と、供給する技術があると推測できます。
じゃあ、鹿ではなぜできないのかという素朴な疑問が頭をもたげ、
またできない何かの原因があるんじゃないか、とも思いました。
 
 
鹿の獣害対策、実のところはどうなのかを知りたいという好奇心もあって、
去る3月22日、京都で開催された「人と鹿の共生 全国大会」というシンポジウムに参加しました。

今、日本における野生鳥獣による農作物被害額は、230億円(2012年 農水省報告)、被害の6割は鹿が占めており、国は年間100億円の対策費を計上しているそうです。
また、国は鹿とイノシシの生息頭数を2023年までに210万頭に半減させる目標を掲げて対策強化を目指している一方、捕獲した獣肉の流通は捕獲頭数の一割にも満たずほとんどが廃棄されており、その廃棄にも膨大な費用を要しているといいます。

では、なぜこれほど鹿が増えてしまったのでしょうか。
原因は、ハンターの減少と高齢化が大きく影響しているようです。
加えて戦後の時代に、野生鳥獣を含めた自然との付き合い方が大きく変化したことも影響しています。明治時代にはあった獣肉食文化が育たなかったことなど、食の変化が原因として挙げられています。
ここでも近代、とりわけ戦後の時代、自然との共生が二の次になっていたことのほころびが今になって目に見えるほどに広がり、じわじわと現代の自分たちを追い込んでいるのでしょう。
 
 
講演ではかつて鹿肉を食べる習慣のなかったイギリス(スコットランド)の成功例が取り上げられました。それは、2001年の口蹄疫を機に国と狩猟者連盟が連携して、トレーサビリティー(生産履歴を追跡する仕組みのこと)の整備と合わせ、市場出荷する猟銃者に資格制度を設け、獣肉の衛生管理と供給、安全性確保の効率化を図り、それに成功したそうです。また、販路についても国と連盟の連携により需要拡大のキャンペーンを展開しました。ジビエ(獣肉)のブランド化、一般普及を同時に推進するべく、ホテルや有名レストラン、食肉加工や料理教室、児童への食育まで「イギリス国民、全ての年代をターゲット」にした売込みを行った結果、知名度が全くなかった鹿肉を国民の2割が食品と認識し、スーパーマーケットなどで一般的に普及するようになったのです。
そして、それは地域を支える産業のひとつになっており、年間377億円もの経済効果をもたらしているとのことです。

またニュージーランドでは、増えすぎたアカシカを捕獲飼育(養鹿)し、鹿肉や鹿の皮を輸出しています。
鹿を駆除の対象から転換、自然資源ととらえて利用した、産業化の成功例です。

  >> ニュージーランド産アカシカ原皮について、詳しくはこちら → 
 
 
シンポジウムの後援団体である日本鹿皮革開発協議会では捕獲された鹿を革製品に利用する試みにも取り組まれているそうで、その紹介もされていました。
「純国産の鹿革」は個人的には魅力に感じますが、それを事業として成立させるまでには数々の障壁があるようです。
狩猟された鹿の皮を自分たちが革製品に仕立てるのも難しいと感じました。

本州で生息する鹿はほとんどがニホンジカです。
ニホンジカは欧米に生息するアカシカ(現在ヌイトメルで使用している鹿革の原料)よりも体が小さく、半分ほどの大きさです。またハンティングで捕らえられた鹿の多くには、体に銃の跡が残るでしょう。
ニュージーランド産原皮のアカシカは捕獲後に放牧飼育された鹿ですから、体に致命的なキズはありません。
比べてみると、ニホンジカはアカシカよりも作る製品が限られてしまうようにも思います。
ニホンジカは日本の森で生息しているのですから、放牧された鹿に比べてもキズの数が多いかもしれません。
また、ニホンジカを捕獲飼育するための土地を、国土の狭い日本に求めるのは難しいように思います。
 
この講演を聞いて、率直に感じたことを記します。

事業として確立させるには、地道な努力と時間、また異業種の連携が必要だろうということでした。
一から立ち上げる事業は利益を出すまでには相当な時間を要するだろうし、マーケットの開拓も一からになります。
すぐに利益にならない新しい事業を、民間であえてやるところがたくさん出てくるとは思えません。そして、異業種間の横の連携が取れていない、または取りにくいであろう現状が想像されました。

ニュージーランドやイギリスの成功例のように、国の主導でうまく循環させる可能性は少なからずあるとは思いました。ただ、こういった事例に学ぶところは大きいとは思うのですが、そのまま取り入れるのは難しいように思います。日本に合うかたちで、かなりのアレンジが必要になるでしょう。
また、素直に考えてそうすればいいのに、ということがなかなかできないのは、この国の常識のように感じることも難しいと思う理由のひとつです。どこかの利権なんかもあるでしょうし、単純なことでは決してないから、こんなちっぽけな自分たちではどうすることもできません。

そんな中、いちばん現実的と思ったのは、鹿の皮でコラーゲンを抽出することなのかな、と。
今、中国などでも、化粧品などで使われるコラーゲンの原料として動物の皮の需要が増えているそうです。
 
 
農家の疲弊はますます積もっていくでしょうし、何とかならないか、とは思うのですが、
今はこうやって悶々と考えることしかできない、もどかしい気持ちを抱きつつ、
またもじぶんたちの非力を思い知る日でした。

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春の休日に。

2014-5-3

とっても天気の良いさわやかな日曜日、信楽に遊びに行きました。
秋に台風で中止になった「パスカルズ&ふちがみとふなと」のコンサートです。

滋賀県立陶芸の森、芝生の広場でピクニック。

 

ふちがみさんの声とふなとさんのベースの音、
パスカルズのサウンドは、
熱くて、さわやかで、ほのぼので、ズンチャカで、サイコーでした。

 パスカルズ  http://www.pascals.jp/
 ふちがみとふなと  http://yoshida-house.tumblr.com/
 
 
5月の連休。
下の子がなぜかオペラ出演の依頼を受け、
本人はよくわからないままで参加することに。
毎週土曜、オペラの練習に励んでいます。
参加型、ユニバーサルデザインとかいう、市民オペラだそうで、
連休の最後5/6に琵琶湖ホールの舞台に立ちます。

 歌劇「天空の町」〜別子銅山と伊庭貞剛〜

物語の主人公、伊庭貞剛(いば ていごう)という人は、近江(滋賀県)出身の明治~大正時代の実業家で、
開発によって荒廃した別子銅山(愛媛県)周辺の環境復元に努めた人物です。
足尾銅山の田中正造ほど有名ではないようですが、近代日本における企業の社会的責任(CSR)の先駆者といわれているそうです。

滋賀県でGW中にこういうことやってもあんまり入らんやろうなー、しかも琵琶湖ホールって。。。
と思いつつも、こういうのもいい経験かなと思います。

今日は自治会の神輿かつぎ。
暑くなりそうないい天気です。

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